2021年10月07日
「子ども絵画ワークショップ」ご報告!
和歌浦小学校にて7/7㈬に開催させていただいた
地元小学校連携事業
「子ども絵画ワークショップ」
のご報告をいたします

(開催からご報告まで3ヶ月も経過してしまい、
申し訳ありません

このアート・キューブのワークショップは、
小学生のみなさん向けのアウトリーチ事業。
アート・キューブを飛び出して今回お邪魔したのは
和歌浦小学校 です

ご協力、ご参加くださった和歌浦小学校の
2年生と5年生のみなさん、そして先生がたも、
まことにありがとうございました

このワークショップの講師は、当館での絵画教室開催時にも
いつもお世話になっている
洋画家 ・土井 久幸 先生

※今年度5/26に開催した土井先生の
「スケッチ会ワークショップ」への
リンクはこちら
↓
2021/06/14
では、和歌浦小での当日のワークショップの模様を
掲載いたします

↓ ↓ ↓
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前半は 2年生 のみなさんのワークショップでした。
土井先生が選んだテーマは
「中と外」



このテーマでは、1枚の画用紙の中に2つの絵を描きます。
「部屋の中と外」「袋の中と外」「水槽の中と外」のように…
「内側」と「外側」の世界の描き分け
が制作課題です。
何を選んで描くかは、みなさんの閃き次第

だから、現実世界に存在する「中と外」だけとは限りません。
むしろ、あり得ない組み合わせがいい

例えば、先生の見せてくれた作品例は、
針葉樹林に浮かぶガラスビンの中にクジラが
泳ぐ超現実世界。

また、描く対象だけでなく、絵画技法を変えることによっても
異なった2つの世界の描き分けができます。
たとえば内側は「クレパスを使った具象」で描き、
外側は「水彩のにじみで抽象表現」をするなど…
自由な発想力による2つの「内と外」の世界を描いていきましょう

図鑑を参考に、思い思いに動物や植物を描き始めました。

これは、2種類のタッチの違うクワガタ…
下の写真のヘラクレスオオカブトを描いた彼女は、
アートのインスピレーションがさらに溢れ出したようで、
この後もう一枚アカハライモリを描き上げたと聞きました


これはオニヤンマかな?

スイカをクレパスと水彩と両方で表現し分けた人も

昼間と夜の景色の対比を描いている絵もあります


あ、あるいは秋と冬の自然風景の描き分けなのかも…
(違っていたらごめんなさい

でも、見ていると色々な連想がふくらんでくる感じ

想像力を様々に掻き立てられる作品ばかりです


みなさん、「中と外」というコンセプトをしっかり
自分のものとして、2つの世界のコントラストを
見事に表現していますね


↑
この写真の彼女は、自らの手を絵筆代わりに、
大胆な着色に挑んでいました

キレイに描けたケーキの絵に、ピンクの絵の具を
塗布した手をダイナミックに躍らせています

それを目の当たりにした当館職員、
素晴らしい発想力に感心しきりでした

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後半は 5年生 のみなさんです。
こちらのテーマは
「セザンヌ風 静物画」


花や器、果物など、いくつかの静物を組み合わせたものを
モチーフに描きます。

19世紀に「写真」が発明される以前、絵画や彫刻に
要求されていたのは芸術性だけではなく、
「モデルをありのまま忠実に再現すること(写実性)」でした。
しかし写真の登場を境に、アーティストたちは「写実性」を超える
視覚芸術の世界(印象派やキュビズム)を目指し始めたのです

今回の5年生のワークショップでは、
見えるものを見えるまま、ただ正確に描くのではなく、
形のゆがみや多視点 といった、
近代絵画の父・セザンヌの作品
のような要素 を取り入れた表現に挑戦しました。

子ども時代から長く写実的な絵画法だけになじんでいると、
「形のゆがみ」「多視点」といった要素の取り入れは
容易ではない

大人なら感覚も思考も頑ななものとなり、
着眼点の切り替えは困難かもしれません。

しかしみなさん、さすがに柔軟な感性を持っています

いくつもの方向からの見え方を集約して描けている人、
構図の切り取り方が斬新な人など、
見ごたえあるデッサンがたくさん

着色の段階でも、見たままの色彩の再現には留まりません。
素材と描き手との対話により生まれたような色彩表現の人や、
水彩画特有の夢見るような色のにじみが美しい人、
まさしくセザンヌを彷彿とさせるようなリンゴを描いた人など…

本当に、水彩ならではの味わいが見事です。

この作品の美しい色合いには、土井先生のクレパス画でよく見る、
ニュアンスあふれるブルーの色調を想起させられました。
見る者を深く頷かせる作品がたくさん誕生しましたね

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情景画の名手・土井久幸先生によるワークショップ、
和歌浦小学校のみなさんにはきっと
楽しんでいただけたかと思います

「中と外」…
「ゆがみや多視点」…
今回、こうした多様な着眼点をもって絵画表現に挑んだ
小学生のみなさんのお姿を拝見し、当館職員も
ひとつの学びを得ることができました。
多様な切り口から物事を見ることの大切さに、改めて
気付かされた思いがするのです

そういえば…
土井先生がワークショップの際、いつも、必ず
おっしゃることがありました。
「絵に上手・下手はない」
「失敗はない」
これは決してきれいごとからの言葉ではなく、絵画の世界を
探求し続ける土井先生だからこそ発信可能な、
絵に親しむすべての人々に向けたメッセージです

描く対象を「どう切り取るか」「どう表現するか」は人それぞれ。
多様な切り口と表現法があっていい。
多様なほうが面白い。
面白さに気づけば「描くことが好き」になる。
「絵を習う」とは、すなわち「絵を好きになる道筋を習うこと」
なのかもしれませんね

ワークショップで和歌浦小に伺った当館職員の1人は、
子どもの頃は図工の時間が憂鬱だったと言います。
理由は、絵を描くのが下手だったから…
いえ、「下手だと思い込んでいた」からでした。
図工の先生に自分の描き方の長所を褒めてもらったり、
ポジティブな楽しい気持ちで絵に向き合ったりする機会を
得られないまま、苦手意識を募らせてしまったのですね

そして今回、ワークショップで土井先生の
「上手・下手はない」「失敗はない」
というお話を聞いた時、職員は自分の子ども時代を振り返り、
しみじみこう思ったそうです。
「こういう授業だったら、私ももっと絵が好きになっていたかも…」
また、今回のワークショップ後、参加者のみなさんに
書いていただいたアンケートの中にも、土井先生の
「上手・下手はない」「失敗はない」
というお言葉がとても励みになった、というご意見がありました

絵画学習は、単に視覚芸術の表現技法習得にとどまらず、
絵画を愛好する心を養うためのもの。
さらには、思考力や創造力、柔軟性や寛容性など、
人間性の根幹を成す部分を育んでくれるものでもあるはず。
だから、誰にとっても、アートは必要なもの。
画家やデザイナーなど、アートの専門分野に生きる人だけが
アーティストなのではない

そう、
全ての人がみんな、
それぞれにアーティスト
なのかも

未来ある子どもたちにとって、芸術文化活動が豊かな人間性醸成の
一助となることを願います

また、全ての人々が芸術文化に生涯親しみ、実り多き人生を送れる
社会であることも願います

そのお手伝いができるよう、アートセンターとしての機能を充実させるべく、
またみなさまに親しんでいただける施設であれるよう、
当館は今後もますます精進いたします

そして…
このワークショップで和歌浦小学校のみなさんが描き上げた
素晴らしい力作は、10/17㈰ にアート・キューブで開催する
まちおこし事業
アート・キューブ
感 謝 祭 2021

の作品展にて展示させていただきます

感謝祭の詳細情報は、近日中にまた当ブログにて公開予定です

ぜひ多くの方々に見に来ていただきたく思います
