2022年08月10日
令和4年度「子ども絵画ワークショップ」ご報告!
令和4年7月13日㈬に開催した
地元小学校連携事業
「子ども絵画ワークショップ」
のご報告です
昨年に続き、今回もご協力いただいたのは
和歌浦小学校
2年生と5年生の皆さんの図工の授業にお邪魔しました。
そしてワークショップ講師を務めてくださったのは、
洋画家 ・土井 久幸 先生
※前回(令和3年度)「子ども絵画ワークショップ」の過去記事はこちら
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2021/10/07
それでは以下に、今年のワークショップの模様をご紹介します
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まず1~2時間目は2年生の皆さん
上の作品例は、クジラの泳ぐ海がビン詰めになっていて、ビンの外に広がるのは針葉樹の森。
ビンの「中と外」にそれぞれ異なった世界が広がる、まことに不思議な絵です
1枚の画用紙に、「中と外」で別々の2つのものを描き分ける…
それが2年生の制作テーマ
土井先生の持ってきてくれたものから、それぞれモチーフを選び…
自分で用意してきた、かわいい動物の写真や好きな絵本などもモチーフにして…
「中と外」の世界の描き分け
に、皆さん一生懸命です
絵画がなぜ楽しいかと言えば、
「好きなものを自分で自由に
選んで描いていい」 から
好きなものだから楽しくなるし、楽しいから好きになる。
そして好きなことは夢中になってやるし、やればやるほど上達する。
上手になれば、それが嬉しくてもっと頑張りたくなる
皆さん、大きくしっかりと描けましたね。
中と外が異なった世界…
現実にはまずあり得ない組み合わせ。
絵画だからこそ、
そんな不思議な世界を表現できる。
絵を描くって、なんて素敵なことなのでしょう
さて、次はいよいよ 着色
今回はクレパスと水彩絵の具を両方使うのですが、まずはクレパスで塗っていきます
ここでクレパス画の名手・土井先生が、
クレパスの上手な使い方
をレクチャーしてくれました
なぜクレパスの紙をむいたり、パキンと折ってしまったりするのか?
それは、クレパスを「横向きに寝かせて」使う からです
クレパスを横向きに寝かせ、側面で塗ります。
先生曰く、「ザラザラッ」と塗る。
そう、クレパスは恐る恐る先っちょでチョンチョンと描くのではなく、大胆に、自由に使うのがいい
この水彩絵の具との併用においては、クレパスは
力強く表現したい部分や陰影など に使用するようです。
そういう用途だから、「ザラザラッ」といくのが相応しいのですね。
先ほどの写真ではクレパスを半分に折っていましたが、さらに短く折ったほうが使いやすいかもしれませんね。
そして、クレパスの上から水彩絵の具を塗ると…
油性のクレパスは、
水彩絵の具をサラリとはじきます
無造作に絵の具を重ね塗りしても、最初にクレパスを仕込んでおけば、こうして
強調したい部分が見事に浮かび上がってくるのです
クレパスで描いたクラゲが水彩の海に浮かぶ絵や、クレパスの打ち上げ花火が水彩の夜空に輝く絵を描いている人もいましたが、まさしくこの画法にベストマッチな題材でしたね
幼稚園児向けのお絵描き遊びに、「はじき絵」というものがあります。
クレパスで描いた絵の上に水彩絵の具を薄く塗って、手品のように浮き上がるクレパスの色を楽しむものです。
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これは当館スタッフが童心に帰って描いてみた、海の生き物たちのはじき絵
クレパスで描いたカメさんやおさかなが、青い水彩絵の具をはじいていますね。
今回の土井先生の「クレパス×水彩」を使うワークショップも、「はじき絵」同様、油が水をはじく性質を使ったもの。
小学校2年生の皆さんも、この クレパス効果 に感激していました
そしてワークショップの様子を拝見していた我々アート・キューブスタッフも、そして2年生担任の先生も、このクレパスの活用法にビックリでした
受講後の2年生の皆さんからは、
「おもしろかった」「たのしかった」
「クレパスでこんな作品ができるなんて」
「えのぐのコツがわかった」「またきてください」
といったご感想を頂きました。
担任の先生も
「クレパスはいつもベタ塗りがほとんどだったけど、こういう使い方があるという発見になった」
とのことでした。
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3~4時間目は5年生の皆さん
この土井先生の描いたセザンヌ風静物画の作品例、一見すると写実的に描かれた絵画のようですが…
よくよく見ると、少し不思議なところもあります。
まず、レモンの入ったカゴの角度。
水平なテーブルの上に置かれているにしては、やけにこちらに傾いているような
右奥の青いミルクポットも同様。
でもその不思議な角度のお蔭で、カゴの中に並んだレモンたちの全貌がわかるし、ポットの内側の白い部分の質感まで確認できます。
リンゴや左奥の緑のビンは座って見た時の視点、レモンのカゴとポットは立ち上がって見た視点…で描かれたものなのでしょうか?
一枚の絵の中に描かれた静物たちなのに、
それぞれ異なった視点で描かれている。
このように、近代絵画の父・セザンヌの静物画とは、
「多視点」 によって描かれたものなのです
遠近法を用い、三次元の世界の物体を二次元の紙の上に正確に表現する…
客観的な視点において、正しく描いた写実画…
それが、我々が漠然と思うところの「上手な絵」。
でも果たして、絵は「正確」で「客観的」で「正しく」なければ「上手」ではないのか
いえ、もちろんそんなことはない
土井先生の言う「見えたまま、見えたように描く」とは、
主観的な絵画法 の実践のことなのです。
描く対象をよく観察するのは、写実画も多視点描画も同じ。
写実画の観察は、遠近法を遵守し客観的な目で行うもの。
それに対し多視点描画の観察は、主観的な物の見方 を大切にします。
自分の感性を第一に、心の目でモチーフたちを見る
「このモチーフは、この見え方で描こう」
という感覚が頭に閃いたなら、あなたもセザンヌの絵心を手にした証
さて、ここでまたまた
土井先生のクレパスの極意 が伝授されます
サラサラと描いたリンゴの鉛筆デッサンに、
黒いクレパスでザラザラッと影を描く。
その上から水彩絵の具で赤いリンゴの色を入れると…
またまたクレパスが絵の具をはじきます
ご覧の通り、あっという間に味わいのあるリンゴの絵が
う~ん、これはスゴイ
水彩をはじくクレパスを「影」に使うと、
リンゴの立体的表現が際立ったもの となりますね
このクレパスで影を描くアイデアに、5年生の皆さんも担任の先生も大いに衝撃と感銘を受けた様子
張り切って制作に取り組んでいます
皆さん少々興奮気味です
なぜなら、この手法を取り入れて描いた自分の絵が、
驚くほど力強い表現力を帯びた ことに気づいたから
そして、
モチーフの表面を自分の手でなぞっているかのように、
モチ-フに没入して描いていく…
確かにそうすれば、必ず絵は素晴らしい輝きを放つはずですね
だって、絵は心で描くものですもの
クレパスと水彩絵の具での着色を並行して、どんどん塗り進めていきます。
もし途中、「あ、ちょっとこれは違ったな」と思っても、
悩んだり諦めたりし、手を止めてしまってはダメ
クレパスなら削ったり上描きすれば直せるし、薄く塗った水彩なら乾かして修整可能。
必ず作品は完成する のです
「失敗は絶対にしない」
という土井先生の言葉は、とても心強いもの
皆さんいつもよりのびのび描き、絵に苦手意識を持っていた人も今回は楽しんで意欲的に取り組むことができたそうです。
見えたままに描く 「多視点」、
クレパスは折って寝かせて使う こと、
水をはじくクレパスの特性を活かした影の入れ方、
水彩絵の具による色づくりのコツ…
それらを学び、
自分の描いた絵のクオリティが高まったことを
はっきりと実感できた ワークショップでしたね
担任の先生自身も一緒になって制作を体験し、このワークショップの楽しさや意義を皆さんと共有し…
「とても楽しかったです今回のことを今後の授業に活かしたい」
とのことでした。
受講後の5年生の皆さんからは、
「多視点をまたやりたい」「多視点はおもしろい」
「クレパスのいだいさを知った」
「かげをつけてリアルにかけてビックリした」
「今までで一番上手にかけた」
「絵に自信がもてた」「絵が好きになった」
「先生の説明がすごくわかりやすい」「また来てほしい」
といったご感想をいただきました
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今回も土井先生のお蔭で、有意義なワークショップとなりました
受講後の感想でたくさんの嬉しいお声が寄せられましたが…
中でも「絵が好きになった」という言葉は、特に感慨深いですね
だって、それまではきっと
「あまり好きではなかった」のだろう絵画を
「好きになった」のですから、
これは本当にすごいこと
芸術に親しむ感性は、他のあらゆる分野の学習にもよい影響をもたらします
そして何より、芸術がその人の人生に与える彩りは、計り知れないほど多大なもの
このワークショップによって、和歌浦小学校が絵の好きな人でいっぱいになりますように
そう願って、また来年もこのワークショップを開催させていただく予定です。
なお、今回のワークショップで2年生と5年生の皆さんが描いた作品の展示会を、
アート・キューブ10月開催の自主事業イベント内で開く予定です
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和歌の浦アート・キューブ
まちおこし事業
~和歌の浦 防火防災のつどい~
※和歌浦小学校絵画展 は
10/22㈯ ~ 10/23㈰ となります。
※「クレパス」は(株)サクラクレパスの登録商標です。